「大学の怪談」第四幕・雪ひらひら(冬)終

標準

◎ 雪ひらひら ◎

 テーブルに辿り、テーブルの右や左にも椅子があることに気が付く。左の椅子を選び、座り、彼女の目を見られず、渦巻き模様で紫色の茶碗を触れる。快く温かい。彼女は何も言わずに、考える顔をして、時々私を見ると私は感じる。お茶を穏やかに飲み、幸せだと思う。ただ彼女と話せるため話を掛ける。
 「…も…もう一人の方も…来ますよね…」
 彼女は優しく微笑み、「どうして?誰かを待っているの?」と言う。これは私たちの最初の会話だ。私の平叙文の質問と彼女の疑問文の言明は…素敵な会話になる。
 「いいえ。」と私は言い、お茶を飲み干す。その後、統べるのは沈黙だ。でも、永遠にこの沈黙は続けてもいい。骨までその雰囲気の温かさを感じ、飲んだお茶の美味しさを楽しむ。
 「勉強はどう?」と彼女は優しく聞く。
 「難しくなったけど…楽しいんだ…」と私は答える。
 「熱心で勉強するよね。きっと、明日の試験でも、一番素敵な成績を取るでしょう。」と彼女は自分と私の茶碗にお茶を注ぎながら、言う。
 「一番素敵な成績を取るのはそちらだと思いますよ。」と私も注がれるお茶を見ながら、言う。
 彼女は私を見て、微笑み、「ありがとう」という。一瞬彼女は私の言ったことに驚いたように見えた。そしてまた、しばらく一緒に沈黙を聞き、お茶の匂いを楽しむ。実に華々しい。
 「そろそろ終わらなくてはいけないね。明日の試験のため、ちゃんと休むべきでしょう…」と彼女は言う。私は何も返事せず、会話の続きを彼女に任せる。
 「私たちの夢は分けられないね…」と彼女は続き、「私はこれからこの茶碗の一つに酷い毒を入れる。匂いもなく、味もない毒だが、毒の入れたお茶の一滴を飲んでも、死ぬのだ。どちらを飲むのか、あなたが決める。私は残る茶碗を飲み干す。振り返ってくれる?」と説明する。
 私は彼女の優しい目を見て、頷いて、振り返る。彼女の姿や私の姿、そしてテーブルとテーブルの上にある全ても窓のガラスに映っている。そして窓のあまり遠くない場所に窓のそばに座っている子が倒れて死んでいる。彼女は振り返った私を少々見て、着ている紺色の素敵な上着のポケットの中から小さい瓶を出し、自分の桜模様の赤い茶碗に一滴の毒を注がせる。彼女は窓のガラスに映っている私に微笑む。そして毒の瓶をポケットの入れて、「振り返っていいよ。」と言う。私は振り返り、二つの茶碗を見える。毒はどの茶碗に入れたのか、私は知っている。そして、彼女は私がそのことを知っていることを知っている。では、このゲームの目的はいったいなんだろう。
 神仏のシワは毎日世界中の一番酷い毒を誰にも飲まれないため、飲んで苦しむと言われている。なぜ他人の代わりにわざわざ自ら毒を飲むか私は分かる。でも言えない。その答えは言葉になるものではなくて、写生のできない感じだから。
 彼女の桜模様の赤い茶碗を穏やかに手に取り、一滴一滴を楽しむように彼女が作ったお茶を飲み干す。彼女は優しく私に微笑み、彼女の目の中に柔らかい感謝の感じが見える。彼女は私の渦巻き模様で紫色の茶碗を取り、お茶を飲む。そして、再び私に微笑して、「一分位かかるでしょう。」と言う。彼女はもっともっと美しくなる。そして、一分は終わってしまう。彼女の唇の端から、血が一滴流れて落ちる。彼女は何も言わずに死んでしまう。どうして?私が毒入りのお茶を飲んだじゃない。
 「やられたのう…毒は薬缶の中に入ってんねん…アイディンの飲んだお茶に入れたのは解毒剤やったわ…」と私の後ろにいる千里さんは説明してくれる。
 そうか…彼女の髪を撫で、彼女の血を拭きたい。でも、それはいけない。肩に責任の重さを感じる。時間はない。私は今までどれだけ時間を無駄にしただろう。
 翌日の試験に出るとき、妙に眠りたくない。夜中、一分も寝なかったのに。妙なことは、それだけではない。死んでいる彼女はいない。試験を中止させないように、自分の死と死体を隠している。上手く試験を終わる。このごろ何も起こらなかったように。
 一週間後、掲示板に載っている合格のできた人のリストの頂上に私の名前は書いてある。
 「一、20902364モダレス・アイディン」
 千里さんのいる講堂に行き、先生の机の後ろで地面に座る。満足ではない。でも、責任を負い、果たしただろう。思い出は最初から最後まで目の前に移っていく。管の間に座って、頭を膝に置いて、時間の減ることを見る少年が見える。忘れていた親しい本の名前やカバーを覚えている。
 気が付くと、既に日が暮れ、暗くなっている。そして、雪が降っている。ひらひらと。私は雪が降っているとき、雪の降る町で埋まった。この雪は私を迎えに来てくれたかもしれない。幼稚園の問に来てくれた母の姿が見えるときの気持ちだ。懐かしい。忘れていることはこんなに多いの?大学に誰もいない。ベランダに出て、降っている雪を触れる。寒いけど、優しい感覚がする。
 雪は朝までずっと降り、段々と重ねた。日が出ると、吊るした私に辿り、重ねた雪に長い影を映す。「一」と書いてあるように。長い一だ。筆の墨が終わるまで一を書くようになっている。

終わり

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