生き埋め

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sadeghhedayat

著者 : サーでグ・へダーヤト

翻訳家 : 甘味屋

PDF:  生き埋め

 

『生き埋め』

 ある狂人の日記から…

息が吸いにくい。目から涙がこぼれて、口がまずい。吐き気がする。頭がフワフワする。胸が詰まっている。体が重くて、だるい。だらけて、ずっとベッドの中に横たわっている。両腕に注射器の跡が残っている。ベッドは汗や熱の匂いがしている。ベッドのそばのナイトスタンドの上にある時計を見る。日曜日・十時。まん中にランプが吊っている天井や部屋の壁を見る。壁紙の模様がバラのブッシュで、ところどころに二羽の黒い鳥がお互いに向き合って、一羽の嘴が何かを喋っているように開いている。この模様に苦悩さされ、どの方に寝返っても、目の前にある。部屋の机の上に瓶や火縄、薬の箱だらけだ。部屋中に燃えたアルコールの臭い、体調不良の臭いが漂っている。窓を開こうと起き上がろうとするが、ある盛り上がる怠惰にベッドに貼られている。タバコを吸おうとするが、欲望がない。濃くなった髭を剃ってから、まだ十分も経ってない。来て、体をベッドに下ろした。鏡に自分が激やせしたのを見た。歩くのに苦労をしていた。部屋が散らかっている。私は孤独なのだ。
三千の不思議な思いが頭の中を巡り回っている。その全部がはっきり見えるが、最小の想像や感覚を書くにも、我が人生を最初から最後まで語らなくてはならない。で、それは不可能なのだ。この思考と喜怒哀楽は、私の一生の結果、聞いた、読んだ、感覚した、そして考えたのが重なってきて、成長した結果なのだ。その全部が私という馬鹿馬鹿しい架空の存在を作ったのだ。
ベッドの中で寝返って、思い出のページを捲る。散漫で狂った思考は頭脳に圧力をかけ、頭の後ろが痛くなって、ズキズキする。こめかみが熱くなって、苦しむ。頭蓋を開けて、この捻れる灰色の質量をぜんぶ頭から取って、捨てられたら、よかった。捨てて、犬にでもやる。
誰も理解できない。誰も信じない。もうどうすることもできない人は「死んだら?」と言われる。でも、死も受け取らなくて、背を向ける時は、何をすれば、いいんだろう。来ない、来るつもりもない死…
みんなは死を恐れて、私はこの粘り強い人生を。死に断られるのはこんなにおぞましいとは。唯一の慰めは、オーストリアで誰かが十三回も色んな方法で自殺したんだと、二週間前に新聞で読んだことだ。首を吊ったら、ロープが敗れ、川に飛び込んだら、救出され、いつも自殺が失敗したが、とうとう家に一人になったとき、ナイフで体のあっちこっちの血管を刺し切って、十三回目に自殺が出来たんだって。
この話は私を慰めてくれる。
いゃ、誰も自殺しようと決めるんじゃないんだ。自殺はある人たちと共にある。彼らの人格と性質の中に棲んでいて、その自殺から逃げられないのだ。支配するのが運命で、運命を作ったのが私だが、自分が作った運命から、逃げられない。自分から逃げられない。
仕方がないじゃない?運命のほうが私より強いんだ。
いろんな衝動に誘惑される。ベッドの中で寝るまま、子供になりたくなって、私に物語を語りながら、唾を飲んでいた、花のおばあちゃんがベッドの上に座っていて、私が眠くなるまで、物語を大袈裟に語ってほしくなった。考えて、子供のごろのところどころをはっきり覚えているのが分かる。まるで昨日のことなんだ。子供のごろはそんなに遠くないのに気が付く。そして、今の自分の暗くて虚しい、卑劣の人生を見る。あの過去は幸せだったか?いいえ。なんと甚だしい間違い。みんな子供が幸せだと勘違いしている。ううん、よく覚えている。あのごろはもっと敏感だった。卑屈でずる賢くて、笑ったり遊んだりするように見えていたかも知れないが、実は、微かの痛烈な非難や不快な事象を深く受け入れて、何時間もそれについて考えて、自分を苦しめていた。私のこの忌々しい人格がくたばれば、いい。極楽と地獄が人の中にあるんだと主張する人たちの言うとおりだ。ある人たちは楽しく生まれて、ある人たちは気分が優れなく生まれてしまうんだ。
手に持って、ベッドの中で書く小さな赤いペンを見る。このペンで、待ち合わせの場所を書いて、知り合ったばかりの少女に渡したんだ。二、三度一緒に映画館へ行ったんだ。最後に行ったのは「歌手と話者」の映画で、シカゴの名歌手も歌を歌ってたんだ。Where is my Silvia ?って。興奮して、目を閉じて、聞いてたんだ。彼の素晴らしくて、印象的な声が未だ耳の中に響いている。映画館そのものが震えていた。彼は死んではいけないと思って、いつかこの声が消えてしまうなんて信じてもいなかった。興奮するにもかかわらず、その悲しい口調で寂しくなってきた。低音と高音の音が漂って、バイオリンの呻きは、バイオリンの弓が私の皮膚に音をかけるような感じをして、私を広い荒野に連れていていった。暗闇の中に、あの少女の胸を触って、揉んでいた。彼女の目が眠そうになっていた。私も不思議な気分になっていた。うまく説明できない快い寂しい気分。彼女の鮮やかな唇にキスをして、彼女の頬が赤くなっていたのだ。お互い、体を押したり揉んだりして、映画の内容なんかが分からなかった。私は彼女の手と遊んで、彼女は体を私に貼り付けていたのだ。今は、全てが夢に過ぎなかったみたい。別れてから、九日もなる。彼女を翌日部屋に連れてくると約束した。彼女はモンパルナス墓地の近くに住んでいた。同日、彼女を連れてきに行った。地下鉄を出ると、寒い風が吹いて、空が曇っていた。そこで、なぜか分からないけど、気が変わった。彼女が醜いか、私が彼女のことが好きじゃないわけじゃなかった。ただ、何かに抑えられた。いゃ、もう彼女に会いたくなくて、愛着を全て消したかった。不随意に墓地に向かった。扉のそばに立っている警官は身を紺色のケープに包んでいた。奇妙な沈黙がそこを支配していた。私はゆっくり歩いて、墓や上にのっているクロス、花瓶の中にある造花や墓の上と回りにある緑を眺めていた。墓誌に書いてある名前を読んだりして、彼らに代われないのを嘆いていた。「彼らはどけだけ幸せだったんだろう」と考えて、土の下で腐乱した死人を羨んでいた。こんな激しい嫉妬が初めてだった。死は、誰でも簡単にもらえない恵みに見えて、どれだけの時間が経ったか知らないが、そこをじっと眺めていた。少女を完全に忘れて、寒さを感じていなかった。死人のほうが生きている人より私に近いような感じだった。彼らの言葉のほうが分かりやすい。帰ってきた。もう彼女に会いたくなかった。全ての物や人から離れたくて、絶望して、死にたかった。くだらない思いが頭に来てしまうな。でたらめ言っているかも。
数日前から、トランプで占っていた。なぜか分からないけど、迷信を信じるようになって、本気で占っていた。というか、それしかやることはなかった。それしか出来ることはなかった。自分の将来とギャンブルするつもりだった。気付いたら、三時間半もずっとトランプで占っていたんだ。まずはシャッフルして、テーブルの上に一枚を表向きに、五枚を裏向きに置いていた。そして、裏向きであった二枚目の上に一枚を表向きに、また順番に四枚を裏向きに置いていたのだ。こうして、最後に六つ目の欄にも表向きのトランプがあって、続いて、黒い模様のカードと赤い模様のカードを一枚ずつ、キング・クイーン・ジャック・十・九・などという順番で並んでいた。開いた欄の裏向きのカードを表に向けて、適当なカードが出ると、それを空の欄に置いていた。六つの欄より過ぎないように。うまく行くと、同じ色で同じスートのカードがちゃんと並ぶようにエースをその空の欄に置いていたのだ。このトランプの占いを子供のとき習って、それで時間を潰していた。
七、八日間前、喫茶店で座っていた。私の前に二人の人がバックギャモンで遊んでいた。その一人が「ギャンブルに勝ったことはない。十回のうち、九回負けちまうんだ」と、禿げて、赤い顔をして、口髭の下にタバコが付いて、アホ面で彼の話を聞く相手に言った。私は唖然とした顔で彼らを見つめた。何を言いたかったかな。忘れた。とにかく、そこを出て、路地を漫然に歩き出した。目を閉じて、車の前に出て、潰されようと何度も考えたけど、あまりにも辛い死で、諦めた。おまけに、楽になる保証はない。また生き残ってしまうかも知れない。この思いが私を狂わせる。そう考えて、交差点や賑やかなところを渡っていたんだ。行き来する群衆、馬の馬蹄や馬車の騒音と車のホーンに囲まれて、私は独りぼっちだった。何百万人の人の中に、ボロボロの小船に座って、海の真ん中に迷っているような気分だった。無様に人間の社会から追い出された気分。自分が生活するために創造されていないのが見えて、それはなぜかと考えて、単調に歩いていた。油絵が展示されているショーウィンドウの前に立って、画家にならなかったことを後悔していた。それは私が好む唯一の仕事だった。絵を見て、考えていた。絵だけは私を慰めてくれる。一人の郵便屋が眼鏡の奥からなにかの紙を見ながら、私のそばを通った。それは何かって?イランの郵便屋さんを思い出した。いつも家に来ていた郵便屋さんを。
昨夜のことだ。目を強く閉じていたが、眠れていなかった。バラバラの思いや扇情的なシーンが目の前に浮かんでいた。夢じゃなかった。まだ眠っていなかったから。悪夢だった。睡眠も覚醒もじゃなかったが、ちゃんとそれが見えていた。体が弱くて、重くなってきて、おまけに頭も痛かった。おぞましい夢が目の前を通って、冷や汗をかいていた。紙の束が空気に開いて、紙が一枚一枚落ちて、そこを顔の見えない一隊が通っていた。暗くてひどい夜は怒っている恐ろしい者に溢れていた。目を閉じて、死に降伏とようとすると、こんな奇妙なイメージが現れていた。回る火山の丸、川に浮かぶ死体、どこからにも私を見つめる目。狂って、怒っている塊は私を襲っていたのを覚えている。柱に縛られた男が血まみれの顔で私を見て、笑って、歯を輝やかせていた。コウモリが冷たい翼で私の顔を叩いていた。細いロープに歩いて、その下の渦に落ちかけて、叫んでいた。一本の手が私の肩を触れて、凍った手に首を絞められ、心臓が麻痺するって気がしていた。呻き、夜の暗闇の置くから辿ってくる禍々しい呻き。現れて、消える顔。私は何をすれば、よかったの?とても近かったのに、とても遠かった。夢じゃなかった。まだ眠っていなかったから。
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皆を馬鹿にしているか自分を馬鹿にしているかよく分からないが、一つは私を狂わせる。笑いは止まらない。喉が笑いに詰まることもある。私の病は何だったか、結局だれも分からなかった。みんな騙されたんだ。一週間前、病気だってフリをする。それとも、妙な病を患っている。漫然にタバコを取って、火を点ける。どうして、タバコを吸うんだろう?知らない。左手の二本の指の間に握るタバコを口に付けて、その煙を吹きだす。これも病なんだ。
今は考えてみる、体が震える。一週間もなっていた。自分を本気でいろんな手で拷問していた。体調を悪くしたかった。数日前から寒くなっていたのだ。お風呂の窓を開けっ放しして、冷たいシャワーを浴びた。思い出すと、忌々しい。呼吸できなくて、背中や胸が痛くなった。今度こそ終わりだと思った。明日は酷いインフルエンザに罹り、ベッドを出られなくって、それを悪化させ、自分を始末するんだって。ところが、翌朝起きると、ぜんぜん風邪を引いたようではなかった。薄い服を着て、日が暮れると、部屋のドアを閉めて、電気を消し、窓を開けて、寒さを受け入れた。寒い風が吹いていた。過度に震えていて、歯がガタガタなるのが聞こえていた。外に目をやった。行き来する人々がいた。走っている車が六階から小さく見えていた。裸の体を寒さに襲わせ、苦しんでいた。その時は狂ってしまったって考えが頭に浮かんだ。自分に笑っていた。人生に笑って、誰も死が訪れるまでなにかの演技をするんだと分かっていた。私もあんな演技をして、これで死がもっと早く来るんだろうと思っていた。唇が乾いていた。汗をかくほど体を温めて、いきなり服を脱いで、寝て、夜を震えながら過ごして、ぜんぜん眠れなかった。少し風邪を引いたが、寝ると、風邪がすぐ治っちゃった。この手も無駄だった。三日間も何も食べずに、夜を裸に窓の前に過ごした。自分を疲れさせて、へっているお腹でパリの路地を一晩走ったこともある。くたくたに疲れて、細い路地で冷たくて湿っぽいステップに座った。真夜中を過ぎていた。酔っ払い工員が私の前を通った。ガス燈の淡くて奇妙な光の前を、話をしながら通るカップルが見えた。私も立ち上がって、出発した。道のペンチにホームレス達が眠っていた。
つい衰弱で入院したが、病気じゃなかった。友だちがお見舞いしてくれて、彼らの前に具合が悪い顔をして、可愛そうに思われていたのだ。明日は死ぬだろうと思っていたのだ。心臓が痛いと言って、彼らは病室を出ると、心の中で彼らを笑っていた。この世に一つだけは上手くできるかも知れないと思っていた。演劇の役者になれば、よかった。
どうやって、お見舞いする友達の前と同じく、先生どもの前にも具合が悪い縁起が出来たんだろう。本当に具合が悪いとみんなは信じていた。何を聞かれても、心臓が痛いと答えていた。なぜなら、心臓麻痺だけは突然死に至って、ただの共通がいきなり殺さない。
奇跡だった。今、考えてみると、妙な気分になる。七日間前から自分を拷問して、友だちの強請りに負けて、大家さんにお茶を頼んで、飲んだら、すぐに治っていた。病気が完全に治って、恐ろしかった。お茶のそばに置いてあるパンを食べたかったのに、残していた。毎晩、今度こそ入院して、もうベッドを離れられないだろうと思い、阿片のCachetsを持ってきて、ベッドサイドテーブルの引き出しに入れ、ちゃんと動けなくなったときそれを飲むつもりだった。しかし、運の悪いことに具合が悪くならなくて、なろうともしていなかった。一度、友達の前に仕方なくパンを食べて、具合が完全によくなった気がした。自分を怯えた。自分の頑固さを怯えた。おぞましい。信じられない。今は認識があって、書くのだ。でたらめではない。はっきり覚えている。
私の中に生じた能力はいったい何だったんだろう?どの手を使っても、無理だったので、本当の意味で具合を悪くするんだと決心した。そう、猛毒があそこに、鞄の中にあるんだ。急性毒。あの雨が降る日数切れないほどの嘘を付いて、偽った名前と住所を使って、それを写真撮影の毒性物質として買ったのを覚えている。医学書で読んで、兆候をよく知っていた「シアン化カリウム」。痙攣、呼吸困難、空腹なら死。二十グラムはすぐ、それとも二分以下で殺す。空気に触れないようにそれをチョコレートのアルミ箔の中に包んで、更にそれを蝋で覆われ、瓶の中に入れていたのだ。量が百グラムで、それを宝石のように扱っていた。しかし、運のいいことに、もっとすごい物を手に入れたのだ。密輸された阿片、しかもパリで。ずっと探していた阿片をぐうぜん手に入れたのだ。阿片で自殺したほうが、あの毒より楽だと読んだことがあった。それで、自分を弱めて、阿片を飲むと決めていた。
シアン化カリウムを開けて、その卵みたいな奴から二グラムを削って、それを空のCachetに入れた。そして、封をして、それを飲んだ。半時間が経った。別に何も感じなかった。今度は五グラムを削って、Cachetに入れて、飲み、ベッドの中に寝た。もう二度と起きるまい気で寝た。
どんな人もこの思いに狂ってしまう。そう、毒は効かなかったのだ。今は生きていて、毒はあそこ鞄の中にある。ベッドの中で苦しそうに呼吸しているが、これは毒の兆候ではない。私は不死身になってしまったんだ。物語でよく語る、れいの不死身。信じられないんだけど、とにかく去って行かなければならない。虚しいんだ。この人生は無意味で無駄で無用になって、いっこくも早く世の中を去って行かなければならない。今度は冗談ではない。どんなに考えても、何も私をこの人生に結んでいないのだ。何も、誰も…
一昨昨日、狂ったように部屋を歩き回っていた。壁にかけたた服、の洗面器、押入れの中の鏡、壁に付いている写真、ベッド、部屋のまん中にある机とその上に落ちている本、椅子、押入れの下にある靴、部屋の隅にあるスーツケースが何回も何回も目の前を通った。でも、私はそれを見ていなかった。それとも、気付いていなかった。何を考えてたんだろう?さあ。無駄に歩いていた。ふと我に返った。この野性の歩き方をどこかに見たことがある気がして、思えだそうとした。どこだっただろう。思い出した。ベルリンの動物園で初めて猛獣を見たときのことだった。起きている猛獣はまさしくこのように檻の中を歩いていた。私もあの猛獣のようになっていて、彼らのように考えていたかも知れない。すごくあの猛獣たちに似てる気がした。無駄に歩き回って、壁にぶつかると、振り返っていた。あの猛獣のように…
何を書いているのか分からない。耳のそばに時計のカチカチ音がして、それを取って、窓から投げ捨てたい。時間の経過をハンマーで頭の中に打つ、この恐ろしい音を。
一週間前から、死の準備をしている。書いたテキストや書類を全て根絶していた。死んでから、持ち物を探られるとき、汚い物が見つからないように、汚れの付いている服を捨てていたのだ。ベッドの中から出されて、先生が診に来るとき、お洒落に見えるように、買ったばかりの新しい下着を着た。オーデコロンの瓶を手に取って、ベッドの中に、いい匂いがする為にスプレーした。しかし、あくまでも他人と違っている人なので、今度も自信がなかった。自分の頑固さを怯え、今度は勝ち目が薄いような気がして、誰もこう簡単に死なないと分かっていた…
身寄りの写真を出して、観た。どなたも自分が想像したイメージとぴったりに見えた。彼らが好きで、好きじゃなかった。彼らに会いたくて、会いたくなかった。ううん、やっぱり思い出がはっきり過ぎで、写真を破った。愛着なんかがなかった。自分のことを審査してみた。親切な人じゃなくて、頑強で嫌悪者に創造されていたのだ。こう創造されていなかったかも知れない。少しも人生に変えられてしまったのだ。死も怖くなかった。逆に、中に生じた病気や狂気に死の磁気に引き寄せられていた。これも昔からのことだ。一つの思い出を思い出した。五、六年前のことだ。ある日、テヘランで朝早く阿片を買いに王繁条にある薬種屋に行った。三トマン(一トマンは十ゲラン)の弊紙をカウンターに置いて、「阿片は二ゲラン下さい」と言った。髭をヘナ染めして、頭にキッパを被ったおじさんが、私を知っているか私の考えを読めるように尻目で私を見て、「返す小銭はない」と返した。二ゲランのコインを出したが、おじさんは「違う。売るまい」と言った。理由を聞くと、「おまいさんは世間知らずな若者だ。これを飲んで、依存者になるかも知れぬわい」と言われて、もう強請らなかった。
いゃ、誰も自殺しようと決めるんじゃないんだ。自殺はある人たちと共にあって、彼らの人格と性質の中に棲んでいるのだ。そう、誰も己の定めが額に書いてあり、自殺はある人たちと一緒に生まれたのである。私はいつも人生を蔑んで、世の中や人々が総て虚しくて無意味なものに見えたのだ。寝たくて、もう起きなくて、夢も見たくなかったが、世間の目に自殺が非常識な行為なので、自分の具合を悪くして、体がボロボロになったら、阿片を飲んで、自殺することにした。「病気になって、死んじゃった」と言われるように。
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ベッドの中にメモを書く。午後三時だ。二人が訪問に来て、帰った。今は一人だ。目眩がするが、快の状態だ。お腹の中に一杯の牛乳と紅茶があって、体がだるくて、不快に温かい。蓄音機で聞いた、いい曲がある。覚えている。その音楽を口笛で鳴ろうとするが、できない。また聞けば、いいな。今は人生が好きでも嫌いでもない。気力がなくて、生きている。生きる欲望もなくて、異常な力に保持されているのだ。人生の檻で鋼鉄の鎖に縛られている。今は死んでいたら、死体をパリのモスクに持っていかれ、賎しいアラブ人に預けられて、もう一度、死んでいただろう。奴らが忌々しくて、顔も見たくない。でも、私にとって同じだ。死んでから、便所に捨てられても、構わない。楽になって、なによりだ。ただ、家で葬式が開催され、私の写真を置いて、みんな泣いたり、お菓子を配ったりするだろう。常識なえげつないことね。全てが馬鹿馬鹿しくて、虚しく見える。数人が私のことを礼賛して、数人も否定するだろうが、最後的に忘れられるだろう。私は可愛くない傲慢な人なんだ。
どんなに考えても、このまま生きていくのは無駄だ。私は社会の病原菌になってしまったんだ。有害な存在。世話をかける奴。ときどき狂気が盛り上がって、遠いところに、とても遠いところに、自分を忘れるところに、行きたくなる。忘れられて、迷って、なくなりたい。自分から遠くへ逃げて、シベリアにでも行って、木造の家の中に、松の木の間に、灰色の空の下に、雪に溢れているところにムジックたちと共に新しい生活を始めたい。それとも、インドへ行って、燃えている太陽の下に、繁茂な森林の中に、変わった人々の間に、誰も私を知らないところに、だれも私の言葉が理解できないところに行って、全てを自分の中に感じたい。でもこんなことの為に創造されていないことに気付く。そう、私は怠け者でlâcheなんだ。間違いに生まれてしまったんだ。両端に糞が付いた棒のように。ここに追い出されるんだ。あそこにも行けないんだ。自分の企画を全て諦めたのだ。恋愛、意欲、全てを無視した。もはや死人に属しているのだ。
時には、偉い企画を企んで、何でも出来る自信に溢れて、「そう、命を諦めて、全てを失った人こそが偉いことができるのだ」と自分に言い聞かせる。でもその後、「で?何の利益があると言うの?…狂気だ。ぜんぶ狂気だ。自殺しなさい。君は生きるために創造されていないんだ。哲学的なことを喋らないで。君は何の役にも立たないんだ。何も出来ないんだ」と自分に返す。どうして死は来てくれなかったんだろう?どうして楽になれないんだろう?一週間も自分を拷問して、なんの報いもないじゃない。毒も効かなかった。信じられない。何も食べず、寒さに苦しんで、お酢を飲み干したのに。毎晩寝るとき、もう結核に罹るだろうと思ったのに、翌朝起きると、ぴんぴんしていた。このことをだれに話せばいいんだろう?熱さえが出なかったんだ。夢も、大麻を吸った兆候もじゃなかった。全部をはっきり覚えている。いゃ、信じられない。
これを書いたら、少し落ち着いたんだ。慰めてもらった。背負っていた重い荷物を下してもらったような感じ。全てを紙に書ければ、よかった。自分の思いを他人に話して、理解させられば。ううん、ある感情は、いくつかのことは他人に理解させられないんだ。それを話せないんだ。馬鹿にされてしまうんだ。誰もが己の思考によって、気ままに他人を判断する。人間の言葉も、人間そのもののように不完全で、弱いんだ。
私は不死身である。毒は私に利かなかった。阿片を飲んでも、無駄だった。そう、私は不死身になってしまったんだ。もうどの毒も私に利かないのだ。私の苦労は全て無駄になってしまった。一昨日の夜、ムチャクチャニになっていないうちにけりをつけるようと決めたんだ。ベッドサイドテーブルの引き出しから、阿片のCachetsを出した。三つで、一本の阿片パイプに足りるぐらいの量だった。七時だった。下の人に紅茶を頼んで、飲んだ。八時まで、誰も会いに来なかった。ドアの鍵をかけて、、壁に付いている写真の前に立って、それを見た。何を考えたか知らないが、あの人は私の目に知らない人だった。「この人は誰?」と自分に聞いた。でも、見たことのある顔だった。会ったことが多かった。振り返った。反乱や恐怖や幸福を感じていなかった。やったこともやることも全て無益で空虚に思っていた。人生全体は馬鹿馬鹿しく見えていた。部屋に目をやった。何もあるべき場所にあった。押入れの鏡の前に行って、自分の血走った顔を見た。目を半分閉じて、口を少し開けて、頭を死んだように傾けた。明日の朝はこのように顔になると思った。まずはどんなに部屋のドアを叩いても、返事はない。昼間で、私が寝ると思うだろう。その後、ドアの鍵を壊して、部屋に入り込んで、この様になった私を見つけるだろう。その全てを一瞬で見た。
水のカップを手に取って、アスピリンのCachetだと自分に言い聞かせて、冷静に一つ目のCachetを飲んだ。慌てて、二つ目と三つ目も飲んだ。体に微かの振るえを感じて、口に阿片の匂いが付いて、心臓がドキドキした。半分吸ったタバコを灰皿に捨てて、チューインガムをポケットから出して、口に転がした。また自分を鏡の中で見た。部屋を見回した。全てがあるべき場所にあった。これで終わりで、れいのプラトンも私を蘇らせられないんだと自分に言い聞かせた。服を調えて、ベッドのそばの椅子の上に置いた。掛け布団の下に寝た。オーデコロンの匂いをしていた。電気のボタンを捻って、部屋が暗くなった。壁の一部やベッドの前部が窓のガラスの向こうから辿る淡い奇妙な光に少し明るかった。もう知らない。良くても悪くても、もうやったことなんだ。寝た。寝返った。誰かがお見舞いに来てしまうのが心配だった。ほっといてもらう為に、数夜も寝ていないと言っておいたのに。好奇心が強くなって、異常なことが起こったとか、楽しい旅行に行くような感じで、快く死んでいくのをしみじみと味わいたくて、集中していた。が、耳が部屋の外に傾いていた。足音が聞こえると、怯えていた。瞼を強く閉じた。十分か十分以上が経ったが、何も起こらなかった。いろんなことを考えて、気を紛らしていたが、後悔していなかったし、怖くなかった。そして、阿片がついに効くような気がした。まずは体がだるくなって、疲れているような感じがした。特に、お腹の周りに、ご飯はうまく消化されていない時のように。そしてね徐々にその疲労が胸と頭にも広がった。手を動かして、目を開いた。まだ意識があった。喉が渇いて、唾を苦しく飲み込んだ。心臓の動きが鈍くなって、気持ちのいい暖かい空気が体を出ているような気がした。特に体の凸の所から。指先や鼻先など。自殺しているんだと承知していた。これを望まない人もいるんだと思い出して、驚いていた。全てが甘くて、虚しくて、可笑しかった。「今は居心地が良くて、楽に死んでいくのだ。他の人は悲しくなっても、ならなくても、泣くても、泣かなくても、どうでもいいだろう?」と考えた。完成が欲しくて、阿片の効果を無駄にしてしまう行為や思考をしたくなかった。こんなに苦労したのに、生き残ってしまうのが怖かった。死が苦しくて、絶望して、救いを求めることを怯えていたが、どんなに苦しくても、阿片のお陰で大丈夫だと安心したのだ。眠って、何も言えなくて、動かない。それにドアの鍵が閉めてある…
そう、ちゃんと覚えている。こんなことを思った。時計の単調な音が聞こえて、旅館に行き来している人々の足音も聞こえていた。聴覚がより鋭くなっていたみたい。体が跳ねると感じていた。喉が渇いて、少し頭痛があった。ほぼ昏睡状態で、目が半分開いていた。呼吸が時に早くなって、時に遅くなっていた。体のあらゆる穴から、暖かい空気が出ていた。私もその空気を追って行っていたみたい。それは強度になってほしくて、説明できない恍惚状態に入っていた。好きなだけ考えていたが、動くと、その暖かさが出るのを妨げてしまう気がしていた。居心地良く寝れば、寝るほど楽だった。右手を体の下から出して、寝返って、仰向けに寝た。ちょっと気分が悪くなったが、また前の状態に戻った。阿片の効果はもっと高めていた。死をちゃんと感覚したかった。感情がより激しくなって、まだ寝ていないことに驚いていた。私の存在が全て快く身体を出るようだった。心臓の動きが鈍くなって、呼吸が遅くなっていた。二三時間も経っただろう。そのうち誰かがドアを叩いた。隣の人だと分かって、返事せず、動こうとしなかった。目を開いて、また閉じた。彼の部屋のドアが開く音が聞こえた。彼は手を洗って、口笛を吹いていた。前部が聞こえて、快いことを考えようと頑張った。去年のことを考えた。船の中に座っていた。ミュージックのパフォーマンス、海の波、船の動き、私に前に座っている美人。思考に耽っていた。翼が生えていたように空間を飛んで回っていた。説明できないほど身軽くなっていた。普通の光は阿片の恍惚のお陰でシャンデリアの光になって、いろんな色に見えるのだ。こうして頭の中に浮かんでくる無益で軽やかな思いも不思議で魅力的になる。どんな空しい思いも壮大になって、時間の経過を感じられないのだ。
体がとても重くなってきて、思考がもう体の上に浮かんでいた。でも、眠っていな気がしていた。まだ覚えている、阿片の最後の恍惚は足が冷たくて、無感覚になって、体が動かず、遠くへ行く感じだったが、その効果が終わってしまうと、私は果てのない悲しみに占められて、意識が戻ってくるような気がした。体が寒くなって、半時間以上も激しく震えた。歯のガタガタ音が聞こえていた。その後、熱が出た。燃えるような熱で、汗が流れた。心臓が詰まる感じがして、呼吸が苦しかった。全てが無駄になって、望んでいた通りにならなかったと思った。自分の不死身さに驚いて、ある陰気な力や説明できない不幸が私と戦っているのに気付いた。苦労して、上半身を起こして、ライトのボタンを捻って、電気を点けた。なぜか手をベッドサイドテーブルの上にあった小さな鏡に伸びて、自分をその中に見た。顔が炎症して、ベージュ色になっていた。目から涙が零していた。心臓が激しく詰まっていた。少なくとも心臓を壊したんだと自分に言い聞かせて、電気を消して、ベッドに体を下ろした。
いゃ、心臓が壊れていなかった。今日はその具合が良くなったのだ。そう、バムの茄子は害虫が付かないんだ(諺)。先生が来て、心臓の動きを聞いて、脈拍を測って、舌を診て、温度計を口に入れた。世界中の医者が来る途端やる同じ形式的こと。私にキニーネとクエン酸ナトリウムを処方して、私の病が何かぜんぜん分からなかった。誰も私の病が何か理解できないんだ。こんな薬が馬鹿馬鹿しい。あそこテーブルの上に七、八種類の薬も並べてある。心の中に笑った。なんて劇場だ。
時計は耳のすぐそばに音を立てるんだ。外から車と自転車の騒音ホーンが聞こえてくる。壁紙に目をやる。模様は紫色の細い葉と白い花の房で、その茎に二羽の黒い鳥が座って、お互いに向き合っている。頭の中が空っぽで、お腹が変な感じがする。おまけに体がボロボロ。ドレッサーの上に投げ捨てた新聞が変な形をしている。見ると、異常に見える。自分もだ。どうしてまた生きているんだろう?どうして呼吸しているんだろう?どうしてお腹が空いているんだろう?どうして食事するんだろう?どうして歩くんだろう?どうしてここにいるんだろう?ここに見える人たちが誰で、何の用だろう?
今はよく自分のことを知っている。除去もなく付加もなく自分そのままを。何も出来ず、疲れて、挫けて、ベッドの中に横たわっている。頭の中に思いの渦が何時間もぐるぐる回っている。いつもの絶望の渦が回って、もう飽きている。自分の創造に驚いている。自分の存在を感じるとは、なんと悲しくて恐ろしい。鏡の中を見て、自分を笑う。自分の顔が、知らない顔で可笑しく見える…
何度も考えた。私は不死身になってしまったんだ。物語で語る不死身は、私のことだ。奇跡だ。今になって、どんな迷信もどんなでたらめも信じる。不思議な思いが目の前を通る。奇跡だ。神は果てのない残酷さで二種類の生物を創造したんだだと分かってきた。幸せな人と不幸な人。一つ目の種類を応援して、二つ目の種類に自分の手で苦しみや不幸を増やさせるのだ。なにか粗暴な力が、不幸の天使が、ある人たちと共にいるのを今になって、信じている。
とうとう一人になった。先生が帰ったばかりだ。紙とペンを取って、書くつもりだ。何をか分からない。書くことはない、それともたくさん書きたくて、書けないんだ。これも一つの不幸だな。知らない。泣けない。泣けていたら、すっきりしたかも知れない。が、できない。狂人とそっくりになってしまった。鏡の中で、髪の毛が縮れて、目に生気がないのを見た。顔がこうではないべきだと思う。思う顔が本当の顔と違う人が多いんだ。自分が嫌だってことぐらいが分かる。食べると自分が嫌い。歩くと自分が嫌い。考えると自分が嫌い。なんと粘り強い。なんとおぞましい。いゃ、これは人間を超える力なのだ。畜生だ。今になって、何でもを信じる。シアン化カリウムを飲んでも、私に利かなかった。阿片を飲んで、まだ生きている。龍に噛まれても、死ぬのは龍のほうだ。ううん、誰も信じるまい。毒は期限切れていたというの?量が足りなかった?多すぎだった?医書に読んだ量が間違っていた?私の手の中に毒も解毒剤に変わってしまう?知らない。こんなことを考えるのは百度目だ。サソリを火で囲んだら、自分を刺すと聞いたことがあるのを覚えている。私の回りにも火の丸はないだろうか?
部屋の窓の向こうに、樋が雨に満ちた切妻屋根の上に、二羽の雀が座っている。一羽が嘴を樋の水に入れて、頭を上げる。もう一羽がそばにむっと座って、羽の中を探る。私は動くと、二羽もチュンチュンと鳴って、一緒に飛んでいった。天候は曇りだ。ときどき雲の向こうから淡い日光がさしてくる。前の建物が全て煙ったくて暗くて憂く、重いような曇天の下に残っている。街の音が、遠くて淡く聞こえる。
あの意地悪いトランプが、私を騙した嘘つきなトランプが、あそこ机の引き出しの中に入っているのだ。もっとも可笑しいのはまだそのトランプで占っているということだ。
仕方がないだろう?運命のほうが私より強いんだ。
人間が得た経験を持ちながら、再び生まれて、人生を営むことが出来たら、いい。けど、人生とは?私がそれを決めるのか?無駄じゃないか?我々は禍々しくて恐ろしい力に経営されているのだ。ある人たちが定めを不気味な星に決められて、滅ぼされて、滅びたいのだ…
もう夢も憎しみもない。人間らしいことを全てなくしたんだ。なくなるのを無視した。人生では、天使か人間か動物になるしかないない。が、私はどれもにならず、我が人生を永遠に失ってしまった。私はにわがまま、不器用で不幸に生まれていて、引き換えて、別の道を行ってみるのが無理だった。もう虚しい幻を追って、人生と戦えないんだ。真実の中に生きていると思うあなた達、根拠でもあるのか?私はもう許したくも、許されたくもない。左にも、右にも曲がりたくない。将来に目を閉じて、過去を忘れたいんだ。
ううん、運命から逃げられないんだ。この狂った思考、感情や儚い想いが事実じゃないか?少なくとも、合理した考えより、自然に見える。自由だと信じているのだが、運命に対してぜんぜん抵抗できない。私の手綱がそいつの手の中にあって、私を八方に引いて行かせるのは運命だ。下品さ。避けない、人生の下品さ。叫ぶことが出来ないし、戦うことも出来ないんだ。人生の馬鹿。
今は、もう生きていなくて、夢も見ない。好むことも、嫌うこともしない。私は死がお馴染みで、親しくなってきたのだ。私のたった一人の友達で、慰めてくれる唯一のものなのだ。モンパルナス墓地を思い出す。もう死人を羨まない。私も彼らの世界に含まれているのだ。私も彼らと一緒で、一人の生き埋めだ…。疲れている。なんてでたらめを書いてしまった。「去って行ってよ、馬鹿。紙とペンを捨てろ。ナンセンスはもういい。黙って、これを破れろ。このでたらめが誰かの手に入ったら、どう判断されると思う?」と自分に言い聞かせる。でも、私には建前がなくて、構わないし、世の中とそのマフィアに笑う。彼らはどんなに厳しく私のことを判断しても、私がもっと厳しく自分のことを判断したのを知るまい。彼らは私に笑うけど、私がもっと彼らに笑うのを知るまい。私は自分も、このでたらめを読む読者も忌んでいるのだ。

×××××

この手書きと一つの紙束が彼の机の引き出しに入っていた。が、彼はベッドの中に横たわっていて、呼吸するのを忘れていたのだ。

サーデグ・へダーヤト
パリ・一九三〇年四月二日

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偉丈夫

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著者 : ファーテミ・ホセイン

翻訳家 : 甘味屋

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緊縛や奴隷制の重い鎖を破ろうとしている社会と国民にとっては、このような苦しみや命を落とすこと、そして犠牲を払うことはいかにも普通で日常的なことに思われるべきである。どのイラン人の若者の胸にも永遠に燃えるべき唯一の聖なる炎は、社会を解放して、国を植民地支配、貧困や不幸、そして残虐と弾圧の爪から救う道に命を懸けるという純粋なる立派な夢・目標である。

死は二種類である。居心地のいいベッドの中の死、そして自尊心と誇りの為の死。不徳と戦う道に命を落とすことを私は神様に感謝しておる。この道に命を落として、植民地主義に襲われて、虐げられた国民に対して恩に着ることを神様に感謝しておる。運動の戦士どもの各々方が戦い続けるとお祈りする。

便所怪談

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ことの始まりは今年の夏だった。修士一の論文のテーマを決めて、大規模の研究を始まった時。今考えてみると、それは恐ろしい事実を悟る第一歩であった。後悔はしていない。何せ事実を知るのは無知でいるよりましだ。

私は「日本之便所」を論文のテーマにして、どんどん取材した。その取材の中にかすかすの奇妙な情報が混じっていた。そう、パズルのピースのように。私がそのパズルのピースを全て集めるのは不思議で、運命だと言いたいところだが、ピースが全て集まった証拠はない。果たして私は事実の真のおぞましさが見えるでしょうか。

畳敷きの部屋の真ん中に、四角い穴がある。で、部屋は陰に溢れていて、薄暗い。ピカピカするものがあってはいけない。その神秘な薄暗さはその空間に肝心なのだ。まるでその空間は生きていて、有機的物だ。それはそうだ。何せ人間が作った子宮なのだ。人間は生まれて以来、子宮に戻るという衝動に迫られている。暖かくて暗いあの安全な場所に戻りたいって。胎児が与えてもらう愛は母親からだけではなく、子宮そのものからである。子宮は子供を愛して、守り、そして養うために存在するものなのだから。人間は永遠に子宮に恵まれなくて、それは悔しくて悔しくて、無意識に人工的子宮を作って、それを便所と名付けたという。

人間は便所に通う毎回も生まれ変わり、永遠に生まれる経験を繰り返す。なぜなら、便所で用を足せても、養ってもらえなくて、生まれるしかない。哀れ哀れ。

「雪隠の鬼」や「厠の神」の伝説も、「ピカピカする便器が嫌」という気持ちも、出産と便所が仏教に非難されるのも、全てこの悲劇に因る。禍々しくて、堪らないでしょう。

母君の聖なる愛

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著者 : イラッジュ・ミルザ

翻訳家 : 甘味屋

PDF:  母君の聖なる恋

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恋に落ちた男にこう伝えた恋人

君の母は、あたしを迫るんだと

いつもあたしを見ると

顔を歪んで睨むんだと

ひどくておぞましい視線で

あたしの細い心に矢を討つんだと

君の意地悪な母は生きているかぎり

甘味もあたしたちの口に毒になり

君を愛して、親しくなるのは無理

彼女の心臓を血で彩ってもらわないかぎり

あたしたちの愛を実らしたければ、

たちまち行って、迷わず、あの胸を破り

狭い胸から、彼女の心臓を出しな

あったかいあれをあたしに渡しな

あれであたしの心のさびを落としな

恋に落ちた奴は愚かでな

腐っていて、恥知らずでな

母君の聖なる愛を忘れてな

酒に酔って、罪に狂った

さっそく行って、母を地面に落とした

胸を切って、彼女の心臓を出した

その後、恋人の家に向かった

母の心臓を蜜柑のように持っていて

家を出るとき、つい、転んで地面に落ちた

彼の腕が少し傷ついたんだ

まだ生きているあったかい心臓が

あのあほの手から抜け落ちたんだ

傾いて、拾おうとしたが

血まみれの心臓から優しい音が聞こえたんだ

ああ、息子の手が傷ついてしまったって

ああ、息子の足が石にぶつけられてしまったって

焼きガチョウ

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著者 : モハマッドアリ・ジャマルザデ

翻訳家 : 甘味屋

PDF: 焼きガチョウ

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焼きガチョウ

お正月の直前で、出世の時期だった。会社で同僚達と一緒にした約束があった。一番に出世ができた人が他のみんなは彼の成功を祝福するように焼きガチョウの御馳走を挙げるという約束。

運命は動き出すと、僕は一番に出世ができてしまった。直ちに結婚したばかりの家内に友らとの約束の話をすると、彼女は「結婚のケーキをも彼らにあげなかったから、償う機会だものね。ただし、十二人のためしか皿や食器がないという問題があるわ。客数がどうしてもあなたと十二人になる十一人を越えないようにするか、食器のや皿を買うしかないの」と言った。

「この月末でうちの経済の状況はどうなのか君がよく知ってるじゃない。家具などを買う予算がないんだ。一方、どう考えても、客の数は二十三四を劣らない」と僕は説明した。

「無理は無理なのよ。上司だけを誘って、とりあえず他の友達を無視して」

「やれ、やれ、可哀相じゃないか。そういう友達こそは一年一度しかこんな機会がなくて、ずっと前から焼きガチョウを楽しみにしてる。約束を守らなきゃ、酷い目に合わせられる。無理もない。よぉし、誰か知り合いに食器や皿を借りることにしよう」

「なにってんの、あんた。結婚の後の最初のパーティに借りたものを使うなんって絶対させないわよ。もしかして、知らないの?そんな縁起の悪いことをしたら、第一子供は死んじゃうよ」と家内は機嫌が悪く言った。

「じゃ、二つのパーティに分けるしかないね。まずは半分が来てもらって、その翌日は残った半分を誘うんだ」

と、家内も賛成してくれて、一月一日と一月三日にパーティを挙げることになってしまった。

ただいま一月二日で、パーティの準備は完璧だ。れいの約束した焼きガチョウ以外、一流の麦スープ、子羊のバーベキュー、二つの色*のライスやいくつのシチューも用意してある。家内の持参金に属するボルスターに腰を下ろして、楽しんで、サーデッグ・ヘダヤト**の素敵なストーリーを読んでいるのだ。ちょうど興奮したとき、家内が入ってきて、僕の従兄弟と名乗るモスタファという長い若者がお正月の訪問に来たんだと伝えてきた。

正確に言えば、モスタファは僕の母の伯母の従姉妹の従兄弟である。二十五歳か二重六歳の若者だ。下品で無職だうえに、アホで不器用だ。おまけに顔や格好も非常に悪くて、発言するとき何度も顔色が変って、喉の中にスプーンが挟まってしまったように、口が開いたまま分からない声を出す。幸いに、一年に一度しかお出でになっていただかない。

「頼むよ。亡父の腕の中に帰っちまうように、僕が寝てると言っといてくれ」と家内に頼んだ。

「あたしに関係ないじゃない。悪いものはその持ち主だけのもので、いいわ。あなたの従兄弟でしょう。あたしはね、あなたの変った部族と関わらないと決めたの。特にあんなやつ…」

仕方がなかったし、裸足で空いたお腹でお年玉をもらうため遠くから来たんだろう彼を絶望させるのが酷いと思った。こんなお祝いの日に恵まなければ、いつ恵むというのと自分に聞かせた。と、彼を呼び出した。坊ちゃんがよくも成長してくれたなと思った。背中がまた異常に長くなって、おまけに顔ももっと悪くなっていた。首が当時に焼けているあの可愛そうなガチョウの首とそっくりで、汚れた襟から出ていた。自分で髭を剃ったと思うだろうけど、その首のあっちこっちに腐ったアスパラガスを這うミミズのような黄色いかマルーン色の毛が派手に見えていた。服の写生は諦めよう。パンツの膝が洗われすぎて、スイカを盗んでその中に隠したと思うぐらい膨れて歪んでいただけを言っておく。

その奇怪の生き物を見物していたとこ、慌てた家内が入ってきて、こう言った。

「しまった、ガチョウは一羽しか買ってないじゃないか?ガチョウを今日のパーティに盛ったら、明日のパーティにどうするの?客の全員に焼きガチョウの約束をして、一羽のガチョウしか買ってないのよ」

彼女の言うとおりで、とんでもないミスをしてしまっていた。「今日はガチョウの半分だけをテーブルに出して、残りをあしたテーブルに出したら?」と家内に聞いた。

「面目を失いたい?テーブルに置かれた半分のガチョウなんって、聞いたこともないわよ。ガチョウは全身のままだからこそ焼きガチョウは好まれてるじゃない」

いかにもそうだった。たちまち状況の重大さが分かり、少し考えて、何がなんでもまだ時間があるうちにもう一羽のガチョウを手に入れるしかないと決めた。このモスタファはちょっと阿呆で、非常に不器用だけど、テヘランのような広い町に一羽のガチョウを見つけるぐらいできるだろうと思った。アメリカを発見するかロスタムを倒すような使命であるまいし。そう思って、彼に「モスタファ君、状況を理解できるよね。僕の可愛い従兄弟、男を見せるんだよ。今日は、何が何でも、石の下の探しても、一羽のよいガチョウを見つけて、持ってきてくれ」と頼んだ。

モスタファは相変わらず、顔色が何度変って、とうとう水が足りない水パイプのような声を出して、「お正月の日は町中を探しても、開いてる店がなくて、ガチョウを買う何って無理ですよ」とおっしゃっているのが分かった。

自棄状態になって、「じゃ、どうすると言うの?」と聞いた。彼はまたその真似をして、その声を出して、「何を言えばいいでしょう。お好きに…キャンセルしたほうがいいのでは?」と言った。

「ばかかよ?後一時間で客が来る、キャンルできるわけがないよ」

「病気になったフリをしたら、どうでしょう?お医者さんにベッドを出ることを禁止されているって」

「今朝はその数人と電話で話をしたんだ。急に病気になったと言えないじゃない」

「じゃ、ちゃんと二羽のガチョウを買いといたが、一羽をどら犬が盗んだと言いましょうよ」

「君が僕の友達を知らないな。乳が化け物に盗まれちまった***と言われている子供じゃないぞ。また店に行って、ガチョウを買えば、いいじゃないか、犬を探して、罰しましょうと諦めないはずだ」

「よぉし、客が来たら、主人がいない、マスメ様のお寺を参りに行ったと奥さんに言わせることにしましょう」

くだらないことをべらべら喋る彼の舌を切って、帰らせる為、「あのね、君のお年玉が用意してある。この弊紙を受けなさい。早く帰って、僕に代わって、お正月の祝福を届けるんだ」と言った。

でも、明らかにモスタファは別のことを考えていた。僕の言うことを聞かず、まだ自分のアイデアを考えて、「今日の客は焼きガチョウに手を出さない方法を見つけたら、明日もまたその焼きガチョウを温めて、テーブルに出せるんですよ」と言った。

まずは空に見えた彼のアイデアを異なる角度から見ると、そんなにも馬鹿らしくなかった。そのアイデアに考えれば、考えるほど、心の中に希望が生まれ、僕の夜に弱く輝く星が現れた。段々に機嫌がよくなってきて、モスタファに向いて、こう言った。

「君にいいことを聞かせてもらうのは初めてだよ。この問題を解決できるのは君だけだ。客が誰一人も焼きガチョウに手を出さないように工夫して、自分の才能を見せてごらん」

モスタファも元気になって、僕の企みが何なのか才能をどう見せればいいのかが分かっていなかったのに、彼の顔にも喜びが表れた。­お世辞の程度を上げて、「何で座らないの?もっと近くにおいで、このベルベットの椅子がいいんだ、ここに座って、元気かい?生活はどうだい?いい仕事と優しい奥さんを探してあげようか?ガーズ****は嫌なの?そのバクラヴァはヤズド町のお土産にもらったよ、どんどん食べて」と彼に優しくした。

モスタファはその歪んだ長い体を椅子に下ろし、聞いたことのない優しい賞賛の感謝を何とか言おうとしたが、僕は言い切った。

「またまた…何を言ってるの?君は僕にとって、弟のような物だよ。帰って、なるもんか?愛しい客だぞ。一年に一度しか来てくれないもの。この町に従兄弟がいないように僕らを忘れたな。今日はどうしても、僕らと一緒に昼食を取るんだ。直ちに僕の服の中に奇麗なのを出して君に上げると家内に言っとく。おしゃれになったら、テーブルにも僕のすぐそばに座るんだ。ただ、君に頼みたいことがあってね、麦スープや子羊のバーベキューなどを食べた後に、焼きガチョウの番になったとき、君が(あらら、もう勘弁して下さいよ。お腹がいっぱいですよ。御馳走が山ほどあるからと言って、己のお腹を壊すわけにはいけません。これ以上食べたら、病院に行くことになってしまいますよ。もう食欲もないので、こんな素晴らしい焼きガチョウを切っちまう必要がないでしょう。わたくしは皆さんの代理になって、この料理をこのままキッチンに返してくださいと頼みます。なあ、諸君。そんなにわたくしたちに味わわせたいのなら、またいずれ訪問して、焼きガチョウもいただきます。しかし、今日は本当に無理です。わたくしたちを殺す気なければ、勘弁してください、へへぇへぇへぇ)と反するんだ。僕は懸命に主張するけど、君がどうしても反するんだ。そうして、他の客も遠慮することになるんだ。」

口が開いたまま僕の話を聞いていたモスタファは微笑して、また声を調節してから、「分かりました。ご心配なく、任して下さい」と言った。

ちゃんと覚えるように、何度最小から彼にレッソンを繰り返した。よく分かったと安心したとき、彼を着替えに別の部屋へ行かせて、また「半陰」のソトーリーシリーズをのんびり読み始めた。

二時間後、客は一人も欠かず、全員テーブルを囲んで座り、「過食」という言葉の真の意味を一生懸命しめしていた。そんなとき、絹のネクターを付けて、シルクの靴下と輝く革の長靴を履いたモスタファは孔雀のように堂々と入ってきた。髭を剃って、顔の穴やバンプを白粉と頬紅で左官工事して、髪を輝かせるにして、鼻や耳の雑毛を刈って、七つの香りを付けて、まるでシネマのアイドルだった。特に驚いたのは、そんな長い背中で何かのトリックをして、僕の服は彼にぴったりだった。まるで空の仕立屋が彼に縫っていた。

モスタファさんは紳士らしくみんなに挨拶をして、冷静に僕のそばの椅子に着席した。彼を首府の有能な若い高官として紹介した。うまく役を演じるのを見て、感心して、安心した。

よくやってくれると示す為グラスにワインを注ぎ、彼に勧めた。

「モスタファさん、どうぞこのお酒があまり入っていないイスパハンのワインを一枚召し上がってください」

口をチュウポヲズして、「フランスのブランデーの味に慣れていますが、せっかく勧めてくださって、いただきます」と言って、一つの動きでグラスのワインを口の中に流した。

「おや…味は悪くありませんな。先般、シャルジュ・ダフェルが何本も贈って暮れたレニングラッドの特別なウォッカの味ですよ。殿方もいて、飲んでくだされば、光栄だったのに…このイスパハンのワインを優れていませんよ。イラン人は励ましてもらったら、西洋人を秀でますな…もう一枚、味わってみたいんですが…」

と、ボトルの三分の二が色んなワインとともなって、その有能な若い高官のお腹に流れてしまった。彼は食べ物にも対して、区別しなかったことを言いつける必要がないだろうね。しかしそれにしても、彼はよく食べて飲むと、信じられないほど調子に乗るな。顎が解凍して、ジョークや思い出をべらべら喋って、パーティの司会者になった。お酒の奇跡が彼の舌を戦士が回す剣のように操っていた。

ダヴゥッドお寺より遠いところへ言ったことのない恥知らずな彼はシカゴ、マンチェスターやパリに住んでいた頃の話をして、僕も信じて、打ち消す人を罵っちまうところだった。皆は耳になって、彼は舌になっていた。奇妙なところに、どしどしに平らげていた食べ物は話の邪魔じゃなかった。まるで彼の首の中に二つの喉があった。一つは大きい食べ物を飲み込むため、もう一つは生意気なことを吐き出すため。

一月十三日*について昨日こそ自分で詠んだと言った詩を読んだ。と、すぐ「ブラボ」や「見事」と言われて、自分が知識人だといつも自慢していた二人の客方が二三つの詩句を何度も繰り返した。詩歌をよく分かると誇る一人も感動して、前に出て、彼の顔にチューをした。

「ブラボ、ブラボ、いかにも見事だ」と言って、彼の筆名を聞いた。

モスタファは答える前に眉毛を上げて、傲慢な顔した。

「わたくしはですね、筆名は捨てるべき習慣だと思いますが、亡くなったピシャワリ教授が主張していたので、仕方がなく、(先生)という筆名を選びました。しかし、あまり使いたくない筆名です」

みんなは優雅な筆名で彼によく似合うと言った。

そのとき、隣のホールに電話が鳴った。「先生」は僕に向いて、「あらら…内務大臣がわたくしに用があって、電話を掛けていると思います。今は食事中で、後でこちらから電話を掛けると伝えてください」と言った。電話に出てみると、間違った番号だったくせに。

目が会ったら、言葉を使わずに、調子に乗った彼を罵っていたはずだが、彼は僕の考えを見極めたようで、首を切られた鶏のようにテーブルに置いてある皿などを見ていた。

よぉし…ただいま盛られた麦スープ、ライスや子羊のバーベキューなどが終わり、いよいよげっぷのコンサートも始まって、焼きガチョウが来るところだ。

まるでエシペクトール**の首を待つように心臓が激しく打って、焼きガチョウが無事にテーブルを去っていくことを祈っていた。召使いは一羽の豊かなガチョウが乗っているトレイを持って、ホールに入ってきた。ガチョウは焼けたばかりで、まだ焼ける油の声が聞こえていた。

僕はじっとモスタファを見て、まさか焼きガチョウの匂いに狂って、我慢できなくなったら、どうすると思っていた。幸いにも彼はまだ狂ってなく、作戦を覚えているようだった。焼きガチョウがホールに入ると、彼は諸君を見て、「諸君、これは調和の限界を超えてしまい、ホストのミスだと認めましょう。わたくしは自分のことを言えば、喉までいっぱいで、この素敵なガチョウを見たくもないのです。ここからまっすぐ病院へ行くつもりであるまいし。人間の胃袋は、何を中に捨てても、いっぱいにならない血まみれの牛の沼***と違いますからね」と言った。そして召使を呼んで、「坊や、このガチョウを取り戻して、このままキッチンに持っていくと諸君は主張しています」と言った。

客はみんな窮地にいて、決断できていなかった。一方、焼きガチョウの匂いがして、ただ味を子羊のバーベキューと較べる為でも、一口さえ食べたかった。他方、偉い人の前に本音を出したくなくて、じっと焼きガチョウを見ているくせに、遠慮して、ただモスタファの話を頷いていた。我々の企みはうまく行っていて、モスタファにブラボと言って、彼のラクダみたいな顔にチューをしたくなった。もう彼を応援して、よい仕事を見つけてやると思った。しかし、僕が何も言わずに賛成するのはいけなくて、ただ形を守るため、長い包丁を手に取った。羊を神様に奉ろうとしているアブラハムのようなポーズになって、どうしてもせっかくコックが作った料理を先生どもに味わわせたいフリをして、ガチョウ様を襲っていた。

幸いに肉屋さんはガチョウの舌を首のともに切っといていた。そうでなければ、偽善者で恥知らずな私はガチョウに何を言われていたかが神様だけは分かっている。まあ、簡潔に言うと、私は催促して、モスタファは否定していたしていた。とうとう他の客もモスタファの請求を主張し始め、皆さんはガチョウの一体性と整合性、そして強襲の中止を求めた。

全てが望むとおりに進んでいたが、僕は「しかし、腹がバラガン町の梅干で満たされ、西洋のバターで揚げられたこんなガチョウを食べないなんってもったいないじゃないですか」と言ってしまった。まだ僕の話が終わっていなかったのに、モスタファはもう我慢できなく、手を伸ばして、ガチョウの大腿を一つ切り抜き、食べ始めて、こう言った。

「これはこれは…腹がバラガン町の梅干で満たされて、西洋のバターで揚げられたのなら、もうこれ以上ホストの依頼を断らなくて、一口ぐらい食べてあげましょうよ」

そんな言葉を待っていた他の皆も飢えた人たちのようにガチョウを襲って、瞬く間にガチョウの骸骨しか残らなくなってしまった。我々昔の人の表現で言うと、まるで最初からガチョウが中から生まれる卵も存在していなかった。

人間は肉食動物だそうだ。しかし、その異なる生き物達はそれに加えてまるで骨食動物だったんだ。スペアの胃袋も持っていたみたい。少し前、彼らはその同じテーブルに二時間ぐらいもフォークとナイフを操り、山ほどの肉や豆などを飲み込み、皿の底までを舐めたのは信じられないことだった。その十一人も改めて食事を始め、肝心なガチョウは裸のまま切られ、僕の目の前にそのハゲワシたちに食いちぎられ、諸君の胃袋という墓場に消えてしまった。

その恐ろしい景色に棒立ちした僕は口が渇いて、無理矢理に微笑するしかできることがなかった。

少しも興奮していた先生のことを語ろう。僕のベルベット調ハンカチを履いていた僕のズボンのポケットから出して、婀娜っぽくに唇を拭いながら、また話をしたくなって、スイスに参加した猟友会でそこの貴族たちと狩った猪の話とか、その頃そこで一緒に恋をした美人の話をして、諸君も彼の話を空の言葉として受けて、頷いたり、褒めたりしていた。

僕はガチョウの没落の景色を見て、世の中の儚さや人間の偽善や下品さ、そしてモスタファの忌まわしさを考えていたそのとき、また電話が鳴った。すぐ別のホールへ行って、狩猟者で誘惑者である先生を呼び出して、「モスタファさん、内務大臣自らですよ。急用だそうです」と言った。

彼は勿論どういうことなのかすぐ分かったが、形を守るため、リスクをして、僕を付いた。部屋を出ると、ドアを閉めて、たちまち力いっぱいで彼の頬に赤い手の跡が残るように、平手打ちした。

「おんのれ、死ぬほど飲み込んでいたくせに、ガチョウを見て、全てを忘れたな、お前みたいな蛮人をパーティの目立ちにした僕を裏切ったな、恩知らずめ」と言って、また平手打ちしてやった。

食事中ぜんぜん出さなかったいつもの小さい声で恐る恐る「しかし従兄弟、作戦を企んでいたとき焼きガチョウだけの話だったでしょう?腹の中にバラガン町の梅干が入って、西洋のバターで揚げられたと言わなかったでしょう?だから僕のセイじゃなくて、従兄弟のセイだと思いますけど…」と言った。

非常に怒って、もう見えることが分からなくなってきた。そんなくだらない言い訳をするなんって。無意識に家のドアを開けて、その恩知らずな小僧を油の壺の中に捕られた鼠のように家から追い出した。そして、気分転換するために、数分表庭に歩いたりした。その後、人工的笑みを顔に出し、客が集まっているホールに入った。

彼らは皆ホールのあっちこっちに腰を下ろして、バックギャモンやトランプで遊んでいた。モスタファさんは皆さんにお詫びを伝えて、内務大臣が送った車に乗って行ったと言っといた。

みんなは彼との別れを嘆き、彼の長点と素質について話をして、更に自分のパーティに招くため、彼の住所と電話番号を僕に聞いた。正直に言えば、僕は恥も知らず、平気な顔をして、でたらめな住所と電話番号を彼らに教えてあげた。

翌日、自分の奇麗な服と伴う物を先生様とともに捨ててしまったってことに気付いた。討たれた矢は弓に戻ってこないね。「己にやれてしまうんだ」****という諺の意味を骨まで感じて、もう二度と出世しないと決めた。

おしまい

説明

* ライスの色というのは、付けた香辛料のことだ。特に、いくつのシチューが用意してある場合、いくつのライスも用意して、そのライスの一つずつに別の香辛料を付けるのだ。

** あらら、この作家はペルシャのカフカと呼ばれる超有名な作家だ。けれど、私の知る限り、彼はあまりコミックのストーリーを書いていない。変った会社員だ。

サーデッグ・ヘダヤトのストーリーなら、いくつ訳したんだ。ブログに入れてある。

*** まだ泣いたりして、乳を求める赤ちゃんにそう言っているのだ。諦めなさい、乳は化け物に盗まれちゃったって…

**** イランの伝統的御菓子の中に一番人気な御菓子だ。色が白くて、味が甘い。

* 一月十三日は縁起の悪い日で、家に残ったり、仕事場へ行ったりするような真似をしたら、為にならない…と言われていたが、今は祭りの日で、みんな町を出て、一日を自然の中に過ごす。一日がそう終わったら、「十三を返した」と言うのだ。

** この人はね、露蘭戦争(イランしロシアの戦争・戦争が終わるのは十年以上も掛かった)で輝いたロシアの将軍の一人だ。彼の本当の名前はPavel Tsitsianovだが、ロシアの戦士達に Inspecteurと呼ばれ、イラン人たちに馬鹿にされて、この変な名前に呼ばれた。

*** 有名で美しい自然の真ん中にある沼だ。なぜこんな怖い名前に呼ばれるのか、誰も知らないらしい。

**** この諺は有名な詩から取り出されているんだ。矢にやたれた鷲は矢の端に鷲の羽を見て、悲しくなって、「己にやられてしまうんだ」と言う。

創造

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ル・鈷アリイリァリッル・リケリエルぽ・jpg

著者 : ミルザデー・エッシュギ

翻訳家 : 甘味屋

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私が創造されたのは、途方もない醜聞だったのさ

私が望んだことじゃないさ、無理矢理だったかな

人民が私に、私は自分の性格に苦しんでいるのさ

神様よ、人民と私をいったい何為に苦しめるのかな

宇宙なる神様よ、私はいい加減なことしかしないのさ

私を創造した目的はいい加減なことを眺めることだったかな

私の本音はお見通しだったはずよ、いいところがないのさ

それでも私を創造して、恐れ入るけど、盲でいらっしゃったかな

私の創造を勘弁してくださったら、よかったのさ

欠けるのはただ一匹のアリだと考えていたら、よかったな

自然よ、私がいなかったら、君が不完全?それは大袈裟

母なる天よ、私を産まなかったら、不振になっていたかな

私を産んだ目的、それは知っているのさ

毎日、様々な無様を眺めることだけだな

もし空にある私の星の光や明るさ

消えたら、宇宙が暗くなっていたかな

そうさ、私の創造の理由ってさ

墓に鋳型が必要だってことだな

その為、人々を苦しみに創造するってさ

神様がいれば、あまりも寛大ではないな

創造したものを守れない神様ってさ

なんで創造したんだろう、それしかなかったかな

アッコルさん

標準

著者 : サーでグ・へダーヤト

翻訳家 : 甘味屋

PDF:   アッコルさん

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アッコルさん

シーラズの住民なら、誰でもアッコルさんとロスタム兄さんが敵対しているということが分かっていた。ある日、アッコルさんはドミル喫茶店でのんびり腰を下して、指の先でシロップの青い椀にある氷を回していた。その時ロスタム兄さんは喫茶店入って、軽蔑的な視線で彼を見た。手をベルトに付けたまま、彼の前の席に向かって、着席した。そして、喫茶店の使用人に「おい、こ…こ…小僧、お茶持って来い」と注文した。アッコルさんは意味のある視線でその使用人を見ると、彼は兄さんの注文を無視した。銅のトレイにあるコップ水の鍋の中に洗って、タオルで拭っていた。

ロスタム兄さんはその態度で頭に来ちゃって、「ろ…ろ…ろう者かよ、て…てめぇに話してんだ」と怒鳴った。使用人は迷った微笑でアッコルさんを見ると、ロスタムさんは歯の間から「は…は…はったりしてる野郎が…男なら、こ…こ…今夜来て、腕を比べてみるは…はずだ」と付け加えた。

アッコルさんは氷を回しながら、下目で状況を見て、そして大胆に笑いを出し、「卑怯が脅すだけだろう、誰が男なのか、誰が話すことぐらいもできないのか決まっとるな」と小鹿色の鬚の下に一行の真っ白な歯が見えるように言ってやった。

そう言うと、みんな笑い出した。ロスタム兄さんの吃りに笑うのではなかった。アッコルさんは白いお凸の牛のように街中に有名で、どんな暴漢でも彼にやられたことがあった。毎晩、ユダヤ人のエス八ッグ爺さんの家に酒を飲むと、ロスタム兄さんは容易い御用…ロスタム兄さんの先祖様も彼にやられていたはずだ。それはロスタム兄さんは自分でもよく知っていることだった。なぜなら彼は二回アッコルさんに傷つけられ、胸に座られることも三四回あった。数晩前、ロスタム兄さんが暴れていたとき、アッコルさんがやって来て、彼をひどく馬鹿にしたんだ。

「なあ、ねぇちゃん、旦那がいないのかい?そのアホなつらを見ると、ずいぶん麻薬をすったようだな…猿の真似の時代は終わってるんだよ…恥ずかしくねぇのかい、てめぇ…これも物乞いの新しい技かい?毎晩、住民の帰る道を塞ぎがって…二度とこんな真似をしたら、てめぇの鬚を燃やしてやるとプリヤ・イエ・ワリ*に誓うぞ…この刃物で真っ二つにしてやる」

ロスタム兄さんは逐電したが、その時からアッコルさんを恨んで、復讐の機会を待った。

一方、シラズの住民は皆アッコルさんが好きだった。なぜかというと、彼は縄張りのサードズダック街に子供や女性に手を出さず、逆に皆と優しく扱って、もし運命の悪い誰かが女性を馬鹿にしたり、人を脅したりしていたら、生きていてアッコルさんの縄張りを出られるはずがなかったのだ。彼は人助けをすることやお金を取り戻さないこと、そして人の荷物を持ってやることもよくあった。

しかし、彼は自分の上に人が立っていることを見る目がなかった。特に毎日何匁も麻薬を吸って、汚い真似ばっかりするロスタム兄さんを自分の上に見る目がなかった。喫茶店にああ屈辱されたロスタム兄さんは蛇毒宮のように座り、鬚を齧って、包丁で刺されても、血が全然出ないはずだった。数分後、とうとう爆笑が静まったとき、平凡な村っぽい服を着ている使用人はまだ狂ったように笑っていた。ロスタム兄さんは頭に来ちゃって、そこにあったガラスのシュガーボウルを手に取って、彼の頭に投げた。でも、シュガーボウルはサモワールに突いて、サモワールと上にあった急須が落ちて、いくつのコップが壊れた。ロスタム兄さんが立ち上がって、真っ赤な顔で喫茶店を去っていった。喫茶店の持ち主は悩んでる顔でサモワールを見て、「ロスタムと一つの武器のセット、わしらと一つのサモワール**」と言った。

彼は悲しそうな声で発言したが、ロスタムの名前は諺に出たから、爆笑がまた上がった。喫茶店の持ち主は使用人をおしおきしようとしたが、アッコルさんは微笑みながら、一つのお金袋を出して、そこに捨てた。

喫茶店の持ち主はそれを取り、手で量って、微笑をした。そこで、ベルベットのコートを着て、緩いパンツを履いている男が喫茶店に入ってきた。周りに目をやり、アッコルさんに向いて、挨拶をした。そして…

「サマッド爺さんは亡くなりました」

アッコルさんは顔を上げて、「神様が全てを許しますように」と言った。

「遺言を残したと御存知じゃないんですか?」

「俺は死人食い***じゃないんだ、死人食いらを呼べ」

「それは…あなたが代理人として選ばれたのです…」

それを聞いたアッコルさんは目を覚ましたように彼を頭から足まで見て、自分のお凸を触った。すると、帽子が後ろにずれて、彼の二つ色のお凸が見えた。半分は日焼けになっていて、いつも帽子の下にある半分は白かった。頭を振るい、パイプを出した。徐々にタバコをパイプに入れて、親指でタバコを整えた。そして火を点けて、「神様が爺さんに全てを許しますように…やったことで、仕方がねぇ…しかし、俺をこんな目にあわせるのは酷いぜ…よし、お前は先に行け、俺もすぐ行く」と言った。

サマッド爺さんの家来だった人は喫茶店を出た。

アッコルさんは眉をひそめて、パイプを吸っていた。急に喫茶店の笑いの雰囲気は暗い霧に溢れたようだった。アッコルさんはパイプの灰を捨ててから、立ち上がって、喫茶店を出た。

彼はサマッド爺さんの玄関に入ったとき葬式は既に終わって、ただ何人の司会者が値段交渉をしていた。アッコルさんは数分庭の池のそばに待ってから、広い部屋に案内された。家の奥さんはカーテンで隔てられた部屋にいて、アッコルさんは彼女の挨拶してから、座布団に座った。

「奥さん、御無事にいますように、神様は子供さん達をまもりますように」

「爺さんが心臓発作したその夜は、街の法師を彼のそばに呼んだのです。そこで、爺さんは諸君の前にあなたが自分の代理人だと述べました。前から主人をご存知だったでしょう?」

「五年前、カゼルンの旅にお爺さんのお目にかかりました」

「主人はいつもこう言っていました。この世に男は一人だけいるのだとしたなら、その一人はアッコルさんです」

「奥さん、我は自分の自由より好むことはありません。しかし既に責任を負われたので、必ず責任を果たすとこの太陽の光に誓います」

そこで、太陽の光を示すとき、別のカーテンの間から魅力的黒い目をしている娘の血走った顔が見えてしまった。お互いの目をじっと見るのは一分もならなかった。その娘は照れたようで、去ってしまった。彼女は奇麗だったかな?

その子はマージャン、サマッド爺さんの娘で、代理人になった街の騎士を見るために来ていた。

アッコルさんはその翌日から、勤めを始め、賢い中古品の商人や二人の兄貴、一人の秘書を連れてきて、あった物の価格を全て慎重に測った。要らない物を貯蔵室に置いて、そのドアを閉めて、封印をした。売るべきものを売った。住宅ローンになっている家のローンを払った。これは全て二日二晩しか掛からなかった。第三晩はくたびれたアッコルさんは八ジュガリブ交差点を歩いて、家に帰っていた。途中、エマムゴリと会って、彼は「ロスタム兄さんがあなたを待っているのは二晩もなってますよ。昨日、(アッコルさんも待たしくれるじゃねぇか、約束を忘れて、来ないかもな)と言ってましたよ。」と言った。

アッコルさんは鬚を撫でて、「無視することだ」と言った。三日前、喫茶店でロスタム兄さんに挑戦されたことを覚えていたが、相手の性格をよく知って、エマムゴリと彼は手を組んで、彼を陥れるつもりだということを見破っていたから、エマムゴリの言葉に注意せず、歩き続けた。家に着くまでマージャンのことをばかり覚えだされ、どんなに考えないことにしても、無駄で、逆に彼女の顔が目の前に見えていた。

アッコルさんは三十五歳のがっしりした男だったが、あまり醜かった。初めに彼を見ると、嫌になっていたが、一度さえ彼のそばに座って、彼が語る冒険や思い出を聞けば、とても気に入っていた。彼の顔にある刃物の傷跡を無視ずれば、ノーブルで好ましい顔に見えていた。鹿の目、黒い眉毛、広い頬、細い鼻、そして真っ黒な鬚。でも、傷跡はその顔を損なっていた。刃物に切られた頬やお凸にの傷が歪んで治り、傷跡の溝に赤い肉がちらちらと輝いていた。彼の父はファルス地方****の偉い土地所有者の一人で、彼は死ぬと、アッコルさんは相続者として彼の富の全てをもらった。しかし、若い彼はお金に興味がなくて、力や騎士道を目指しながら、人生を送ってきた。それしか何も欲しくなくて、お金を物乞いに上げたり、強い酒を買って、飲んだり、あるいは居候のような友達と宴をしたりしていた。

彼の短所と長所の全てはこれだけで、驚くことに彼の人生に恋というものがいっさい入っていなかった。友達が変なパーティをしたり、女を連れたりした何回も、彼は拒んでいた。しかし、サマッド爺さんの代理人になって、マージャンを見てしまった日から彼の人生は大きく変った。一方、彼は死んだ人に任された責任を感じて、他方、マージャンに惚れていた。自分の富を燃やしてやった人は、毎日サマッド爺さんの富を増やすため頑張って、爺さんの家を借りるため、彼の家族をもっと小さい家に引越しさせて、彼の子供に教師を雇って、彼のお金を儲かるように投資していた。

その時からアッコルさんは夜の冒険や縄張りを作ることを止めた。友達と楽しむこともせず、彼の熱狂さが消えた。しかし、街のしたっぱや兄さんたちは、もうサマッド爺さんのお金を奪えなくなってしまった法師たちに唆され、アッコルさんを馬鹿にして、松下喫茶店で彼の悪口をしていた。

「アッコルさんだと?誰の犬かな?よく消えちまったぜ、サマッド爺さんの家の周りにいるらしい、何かを得ようとしてるだろう、サードズダックの街に着くとき、犬のように尾を脚の間に下がって、渡るぞ…」

彼を怨んでいるロスタム兄さんも吃りで主張していた。

「老いたくせに、よく狂ってるな、あの野郎サマッド爺さんの娘に惚れて、刃物を鞘に戻したんだぜ、恥を知らんのかね、サマッド爺さんの富をてめぇのものにしたらしい…」

もうアッコルさんは誰にも感心されなくて、どこに行っても、皆こそこそしゃべって、彼を馬鹿にしていた。アッコルさんは何と言われているのかあっちこっちで聞いていたが、気にしていなかった。なぜなら、既にマージャンの恋しか、何にも考えていなかった。

夜は悲しすぎて、酒を飲んでいた。一羽のインコを買って、鳥の籠の前に座って、インコに心の秘密を話していた。もし彼は結婚の仲介をしていたら、マージャンの母は必ず賛成してくれるはずだったが、彼は家族の責任に負われたくなくて、自由に残りたかった。それに、預かった娘を自分の妻にする何って、信用を裏切るという意味だと思っていた。おまけに、毎晩、鏡で顔の傷跡や目の下の黒ずみを見て、大声で悲しくこう言っていた。

「俺を愛せないだろうな…若くてハンサムな男が見つけられるんだものね…それに、卑怯だ…彼女は十四歳、俺は四十歳…でも、どうすればいいと言うのカイ?俺はこの恋で殺される…マージャン…君が俺を殺したんだ…これをいったい誰に言えるのか…マージャン…君の恋は俺を殺したんだ…」

目が涙で満ちていて、次々と酒のコップを飲み干していた。そして、頭が痛くなってそのまま眠っていた。

しかし真夜中は、迷路のような道、広い庭と紫色のワインを持っているシラズの町が眠るとき、乾留液のような夜空に星達がウィンクをしているとき、花色の赤い頬をしているマージャンが布団の中にのんびり呼吸しているとき、その時、真のアッコルさんは、感情や欲望を持っている自然的なアッコルさんは、彼を囲まれている社会というものの前に恥じなく、子供の時から信じさせられたものを出て行って、自由にマージャンを抱いていた。彼女の心臓の穏やかな鼓動や熱い唇、その柔らかい体を感じて、彼女の頬にチューをしていた。でも、起き上がったとき自分を罵り、人生そのものを呪って、狂った人のように部屋の中に歩いていた。こそこそ独り言をしゃべって、恋が静まるように一日をサマッド爺さんの財務の苦労過ごしていた。

七年間もこう経った。アッコルさんはサマッド爺さんの家族をしっかり守った。もしその家族の子供の一人が病気になっていたら、彼は一日中も夜も優しい母のようにその子供のそばにいて、お世話を見ていた。その子供達を愛していたが、マージャンへの愛は別のことで、その愛でそう穏やかで大人しくなっていたかも知れない。ここ数年に、サマッド爺さんの子供達はずいぶん成長していたのだ。

しかし、なってはいけないことになってしまった。マージャンに婚約者が出てしまった。それもアッコルさんより醜くて、年を取った人だった。アッコルさんは我慢して、眉をひそめることさえもしなかった。逆に平気な顔でマージャンの持参金を買いはじめて、素晴らしい結婚式を挙げた。サマッド爺さんの家族をまた自分の広い家に連れて、一番広いホールで男性の宴を催した。シラズの偉人や商売が全員結婚式に誘われていた。

その日、午後五時に、客がみんな部屋の回りに座って、彼らの前にお菓子や果物が置いてあった。アッコルさんは昔の格好と同じく新しい縞模様の黒いスーツを着て、ボルサリーノの帽子を被り、ホールに入った。帳面などを持っている三人も彼を沿ってきた。客達はじっと彼を見た。アッコルさんは堂々と法師のそばにいて、こう言った。

「法師さん、死亡した爺さんは遺言を残して、七年間も我に責任を負わせました。あのとき五歳だった爺さんの年下の息子は今十二歳です。この帳面も爺さんのビジネスの会計です(彼を沿った三人を指差して、言った)。今日までの経費もこの結婚式の費用も自分で払わせてもらいました。これで、責任を果たしました。我には我の道、彼らには彼らの道。」

こう言って、泣きそうになり、何も付け加えず、諸君の反応をも待たず、顔を下げて、目に涙が溢れてきたまま、そこを出た。家を出たとき、深呼吸をした。自由になって、責任を果たしてしまったと感じたが、彼の心に重傷が残っていた。のんびり道を歩くと、ユダヤ人のモラ・エスハッグの家が見えてきて、ためらいもなく、その家の階段を上って、周りは小さい部屋のドアがいくつもある汚い縁側に入った。古さやピクルス匂いが空気に漂っていた。キッパーを被って、ヤギひげ伸ばしたモラ・エスハッグは仮の笑みを顔に浮かべて、彼に向かってきた。

「頼むぜ、いい酒をくれ」とアッコルさんは元気なさそうに頼んだ。

モラ・エスハッグは頷いて、地下室に下り、数分後、一本の瓶を手に持って戻った。アッコルさんはその酒を取って、瓶の蓋を壁に打って、開けた。そして、一気にその半分を飲んだ。目に涙が出て、咳をした。汚い格好をしているモラ・エスハッグの子供は鼻水が流れるまま、開いた口でアッコルさんを見ていた。アッコルさんは手の裏で口を拭って、指を部屋の窓の前に置いてあっる塩の椀に押して、口に入れた。

「男は土の味をしとるんじゃのう」とモラ・エスハッグは前に出て、お世辞を言った。

そしてアッコルさんの服の中の布を触って、「何を着てるのかい?これは廃れるんじゃろうな、よろしかったらいい値段で買ってあげるわい」と言った。

アッコルさんは悲しそうに微笑んで、ポケットからお金を出し、彼の手の中に置いて、その家を出た。夕暮れだった。暑くて、考えはが悩みでいっぱいで、おまけに頭が痛かった。午後の雨で道がまだ濡れて、柑橘類の匂いが空気に漂っていた。マージャンの顔は、その花色の頬、黒い瞳や長い睫毛、そしてお凸の前に舞っている前髪は、アッコルさんの目の前に、霧状で妖しく現れていた。アッコルさんは自分の過去を覚えだした。友達とサーディやハフェズ*****のお墓を訪れたときを覚えだした。時には笑って、時には眉をひそめていた。自分の家が怖いということは確かだった。そこに帰るのは耐えられないことで、遠い場所へ行きたかった。今夜も股を酒を飲んで、インコと話をしようと思った。人生そのものは既に無意味なものに見えていた。つまらなくて、一つの歌を覚えだして、呟いた。

「鎖しかなにもない

囚人の徹夜を妬む」

そして、もう一つの歌を呟いた。

「我が心は狂って、鎖を持ってくるべきだ

狂ったものを鎖で縛るしかないのだ」

でも退屈したか、別のことを考えていたから、歌を止めた。

アッコルさんは久しぶりのサルドズダック街に着いたとき、既に夜になっていた。そこにある広場は、活躍していた昔アッコルさんは自分の縄張りにして、誰も近付ける度胸がなかった場所だった。無意識にある家の前にある石の台に向かって、そこに座り、パイプを出して、徐々に吸いはじめた。昔と比べれば、ボロボロになっているようだった。住民達も彼にとって、みんな変っていた。彼は変って、陥れたように。目眩がして、頭も痛かった。ふと、前に彼に近づいてくる黒い姿が見えた。

「く…黒い夜だけは、お…お…男の本音を知ってる」

アッコルさんはロスタム兄さんだと分かって、立ち上がった。手を腰に当てて、こう言った。

「てめぇの死んだ親父に言え…貴様って奴も自分を男だと言うが、硬い地面に小便してねぇんだよ*」

ロスタム兄さんは皮肉の笑いを出して、もっと前に進んで、「ひ…久しぶりじゃねぇかよ、こ…こ…今夜、サマッド爺さんの家に結婚式だろう、て…て…てめぇ誘われてねぇ…」と返そうとしたが、アッコルさんは「神が貴様をよく知って、舌、半分しかやらなかったな…その半分も今夜俺がもらうぜ」と言い切った。

と、自伝の短刀を出した。ロスタム兄さんも自分の短刀を出した。アッコルさんは自分の短刀を地面に突っ込むように下に投げて、「よぉし…これを取れる男が来い」と怒鳴った。

ロスタム兄さんはそのうち急にアッコルさんを襲ったが、彼の短刀は跳ねて行くぐらい強くアッコルさんは彼の手を殴った。その騒ぎで、知覚に行き来していた通行人が集まっていたが、誰にも前に出て、和解させるドキョウがなかった。

アッコルさんは笑って、「やれ、やれ、拾っても構わんぞ、だが今度しっかり握れ…なぜなら今夜、今までのをきっちんと返してやるからな」と皮肉した。

ロスタム兄さんは握った拳で彼に向かって、二人は格闘を始めた。三十分以上も格闘が続けて、二人はしとしとと汗をかいていたが、誰も勝っていなかった。格闘中アッコルさんの頭は石の台に突っ込んで、くらくらした。ロスタム兄さんは必死に戦っていたが、もはや限界だった。でもふと、そばにあるアッコルさんの短刀が見えて、懸命に力を入れ、それを地面から抜いて、アッコルさんの腰に突っ込んだ。二人の手にもう力が入らないぐらい強く刺した。

傍観者達は急いで、アッコルさんを上がらせた。彼の腰から沢山の血が地面に流れていた。彼は手で傷を塞ぎ、数歩壁のまで歩いたが、また落ちた。そこにいた人たちが、彼を上げて、家に連れていった。

翌朝、アッコルは刺されたニュースがサマッド爺さんの家に辿ると、長男のワリさんがすぐお見舞いに行った。彼の枕元に着くと、顔色が悪くベッドの中に寝て、口から血と混じった泡が出て、苦しく呼吸しているのが見えた。アッコルさんはほぼ意識がないその状況にも彼を見分けたらしくて、振るう口調で彼に声を掛けた。

「この世に…インコしか…持ってない…そいつのお世話…頼ん…に預け…くれ…」

そして、もう何も言わなかった。ワリさんはベルベットのハンカチを出して、涙を拭った。一時間後、意識のないアッコルさんは死んだ。

シラズの住民はみんな彼の死で泣いた。

ワリさんはインコの籠を家に連れた。

その日の午後、マージャンは籠を自分の前に置いて、インコの彩り、その曲がった嘴や感じのない丸い目をじっと見ていた。ふと、インコはアッコルさんの荒い口調で話し出した。

「マージャン…マージャン…君が俺を殺したんだ…これをいったい誰に言えるのか…マージャン…君の恋は俺を殺したんだ…」

マージャンの目から、涙が徐々に流れた。

おしまい

説明

*  昔々の超有名な力持ち(特に騎士道に忠実したらしい)

** 諺・「ロスタム」はロスタム兄さんのことではなく、大作品である「シャー・ナーメ」(「王署」という意味)の英雄のことだ。彼は一頭の馬や一つの武器のセットだけを持って、鬼達やイランの適どもを排除していた。

*** そのままペルシア語から訳した。相続をもらうため、死んだ人の葬式に参加して、なるべく死んだ人に親しかったふりをする人のこと。

**** シラズはその地方の一番広くて奇麗な町である

***** お二人も昔の著しい詩人である

* 悪い諺(理解するだけだ、使ってはいけない)・硬い地面に小便をしたら、その小便の滴は跳ねて、自分の服や靴を汚れてしまうんだろう。だから、この諺の意味は「お前は難しい状況にいないから、上手くできるんだ。難しい状況に対していないんだ。」ということだ。